『三幕の殺人(三幕殺人事件)』アガサ・クリスティの罠 ※ネタバレあり

※アガサ・クリスティ『三幕の殺人』をネタバレで紹介しますので、展開を知りたくないという方は読まないようにご注意ください※

アガサ・クリスティ『三幕の殺人』。

この物語は元俳優のサー・チャールズが海辺の館でパーティーを開いたところから始まります。

三幕殺人事件

そのパーティーに名探偵ポアロも招かれるのですが、そこで乾杯のカクテルを飲んだ牧師が亡くなります。

死因は毒物によるもの。

牧師という職業柄もあり、牧師は人に恨みなどもたれない人柄でした。

それが何故?

ここで名探偵であるポアロが捜査するのか、といえばそうではなく元俳優サー・チャールズが若い娘のエッグと共に犯人探しにのり出す、そういう変わった趣向の話でした。

他の人が探偵をやるなら今回のポアロの役割は何なんだ?

と疑問に思いながら読み進めていきますと、物語が後半になるほどポアロが活躍します。

しかし、これはアガサ・クリスティ得意のフェイクでした。

ポアロに代わり探偵を演じるなら読者は彼を犯人ではないと信じる―毎回感じるのですがアガサ・クリスティは人間の心理をあやつるのがとても上手いです。

人間の心理とは不思議なもので物語の中で主役級に活躍していると、その人は悪人ではない、正義側の人間だと信じ込んでしまうのです。

そんな人間の心理をアガサ・クリスティはよくよく知っていて物語に利用する、それに読者は毎回翻弄されるのです。

今回もアガサ・クリスティは罠をしかけてきました。

実は犯人はサー・チャールズでした。

この物語ではタイトルどおり三人の人間が殺されます。

では何故サー・チャールズは三人を殺したのか?

彼は世間では独身で通っていましたが実は妻帯者でした。

この国では(今もそうかは知りませんが)離婚に関して間違った法律がありました。

ひとつは結婚した相手が終身刑を受けて刑務所に入っているとき、もうひとつは精神病院に収容されている場合。

サー・チャールズは若い女性エッグに心惹かれていて彼女と結婚したいがために三人を殺す決意をしたのです。

二人目の被害者はサー・チャールズが結婚していることを知る唯一の人間でした。

そして三人目は精神病院に入っている妻を。

一人目である牧師の場合は、たまたま毒の入ったカクテルに牧師が当たってしまっただけでした。
『三幕の殺人』の最後にポアロが言った恐いセリフが印象的でした。

毒入りカクテルを飲んだのはもしかして・・・

「この私だったかもしれないのです」