『検察側の証人』クリスティの短編No.1の作品 ※ネタバレあり

※アガサ・クリスティ『検察側の証人』をネタバレで紹介しますので、展開を知りたくないという方は読まないようにご注意ください※

戯曲とは脚本のような文芸作品のこと、それをアガサ・クリスティの『検察側の証人』を読んだことではじめて知りました。

『検察側の証人』は映画化も舞台化もされて、短編なのにもかかわらず、アガサ・クリスティ作品の中でも人気の作品です。

そのわけは、あまりにも内容が素晴らしいからです。

検察側の証人

殺人事件自体は金持ちの未亡人エミリーが殺されて容疑者として捕まったのがレナードというハンサムな若者でした。

エミリーは彼をどうやら恋していたようで、親しく付き合っていた。

それにエミリーはレナードを自分の遺産の受取人に指定している事実もあり、そのことはレナード本人も知っていたとエミリーと一緒に暮らしていたメイドの証言でわかった。

それにレナードは死亡推定時刻にエミリーに会っていたとも言って容疑者側に不利な証言も付け加えられた。

そして、レナードは死亡時刻には妻のローマインと一緒にいたと弁護士に言った。

ここまでは、普通の殺人事件の流れです。

しかし、ここから弁護士が妻と会ったところからが問題です。

夫レナードの味方になるはずの妻ローマインはレナードを罵倒し、夫をなじるのです。
もしもローマインを弁護士側の証人として法廷に立たせたらレナードに不利な証言をするだろう印象を持ち弁護士はローマインを証人からはずすことを決めます。

しかし、何とローマインは検察側の証人として法廷に出廷してレナードに不利な証言を言い出します。

これではレナードは有罪になると誰もが思ったときに謎の女性がローマインは嘘の証言をしているといい、その証拠となる手紙を弁護士は受け取ります。

その手紙によってレナードは無事無実を勝ち取るのですが。

物語はここからがクライマックスでした。

弁護士はローマインと謎の女が同じ癖を持っていたことに気がつき、ローマインに問い詰めます。

ローマインは元女優で謎の女は自分だというのです。

妻であるローマインが夫レナードを無実だと証言しても信用されない、だから反対に夫の不利な証言をして、その証言は嘘だったとみんなの前で証明して見せればレナードは無実になると踏んだのです。

これだけでも驚くべき真実ですがアガサ・クリスティはもうひとつの驚きを用意していました。

何故こんな危ない橋をローマインは渡ったのか?

ひとつ間違えばレナードは有罪になりかねないのに。

弁護士の質問にローマインは、

「貴方はご存じないのです、彼が有罪であることを」

と告白するのです。

ローマインのしたことは本来は許されないことです。

ですがこの本を読めばいかにローマインが夫レナードを愛しているかを感じずにはいられません。

彼のために嘘をつき、謎の女に変装して、最後には自分が悪女といわれようとレナードを無罪にしたのです。

『検察側の証人』は明晰な頭脳を持った女性が愛ゆえに愚かな犯罪を犯した物語でした。