『カーテン』ポアロ最終作がクリスティの遺作に ※ネタバレあり

※アガサ・クリスティ『カーテン』をネタバレで紹介しますので、展開を知りたくないという方は読まないようにご注意ください※

アガサ・クリスティの作品の中で主役となるキャラクターは名探偵ポアロですが、この『カーテン』でポアロの物語は終焉を迎えます。

さらに奇しくもこの作品が発表された数ヵ月後にアガサ・クリスティは亡くなってしまい、遺作となった作品です。

カーテン

舞台はアガサ・クリスティのデビュー作で登場したスタイルズ荘。

過去に悲惨な殺人事件のあったスタイルズ荘は現在高級下宿になっていました。

友人ヘイスティングはポアロに呼び出されて懐かしいスタイルズ荘に訪れます。

しかしポアロは老いていて心臓を患って、もういくばくも無い様子。

そんな中でもここスタイルズ荘で殺人事件が起こるとポアロは察知してヘイスティングを呼び出したのです。

犯人をXだとポアロは呼びます。

今回の犯人Xは今までに無いタイプで直接手を下して殺人を犯すのではありません。

他人に何気なく話しかけて、だんだんとその気にさせていき、相手が犯罪を犯すように仕向けていく、変わったタイプの犯罪者です。

しかもXは殺す人間にも殺される人間にも恨みがあるわけでなく、殺したいという気持ちがあるわけでもありません。

人間は誰しも一瞬相手を殺してやりたいほど憎むことがあり、Xにはその気持ちを増幅させて実行する気持ちに持っていく能力の持ち主でした。

殺すことによってXに何の利点があるわけではなく、ただ自分の思い通りに殺人が行われる。

その快感を得ることに最高のエクスタシーを感じるサディストだったのです。

日常会話程度の話で殺人に持っていく、こんな程度では殺人罪として適応されません。

だが、このままXのような犯罪者をほうっておくわけにはいかず、しかもXは友人へイスティングまでその手にかけようとします。

ポアロはそのことでついにXを自分の手で葬り去ることを決意します。

アガサ・クリスティはそれまでいろんな常識破りなトリックや新事実を作り出してきました。

今回の『カーテン』でも主役である探偵が自らの手で犯人を葬り去るという驚きの手法を用いました。

これにはいつものように賛否両論あるのですが、私としては老いて昔の鮮烈な内容ではないもののもさすがはミステリーの女王だな、としか考えられませんでした。

私は元々正義の名の下にずうずうしくも他人のプライベートを暴くのですから、殺人者として起訴出来ないからといってほったらかしにするよりも自らの手を汚す覚悟を持ったポアロのほうが好ましく思えました。

それに探偵が犯人を裁く物語は名作で他にもあります。

あの有名な「Yの悲劇」などがそうです。(レーン最後の事件などもそうですが、名作ということではこちらかと)

これからも犯罪を犯すであろう犯人をこのままにしてはおけないと自らの手で断罪するのは悪でしょうか?

それなら新たな犯罪が起こるのをただ傍観してみているのは悪ではないのでしょうか?

この是非を問う機会を与えてくれたアガサ・クリスティに拍手です。